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安心サポートネットの文化を育てよう!

市民後見人による後見の社会化

NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット
理事長 森 山  彰
1 当法人が、平成21年には、熊本市で「熊本版後見人育成研修」を実施、更に、同22年6月には、福岡市で「第3回市民後見人育成研修」を実施した。その後追いをするかのように、平成23年度には、厚労省は市民後見養成事業をスタートさせ、関係法律の改正も行って、全国的に市民後見人の育成とその活用に乗り出した。また、同時期、東大の市民後見プロジェクトでも、毎年市民後見養成講座を開催し、多数の後見人の卵を社会に送り出していた。
 他方では、23年7月には、東大プロジェクトによる「市民後見全国大会」、24年3月には、さわやか福祉財団主催の「NPO法人市民後見全国サミット」が華やかに開催され、この時期は、全国的に市民後見が大変盛り上がった時期であった。
2 ところで、この全国大会や全国サミットには、メディアからの取材者が多数参加していた。その中の1人尾崎雄氏(老・病・死を考える会世話人・元日本経済新聞編集委員)が、私の事例報告やパネラーとしての発言に興味を示して、実施中の「筑紫野市市民後見人養成研修」の見学を希望され、東京から来福、終日熱心に見学された。
 そして、3か月後には、「NPOが市民後見人100万人をめざす」、「住民・市民は「後見の社会化」の担い手になりうるか」というテーマの論稿をある雑誌に寄稿され、そのコピーが私に送られてきた。
 その論文の筋書きだけを簡単に紹介すると(ただし、当法人の関係部分はゴシック体に引き直し、原文のまま掲載)、次のとおりである。
「成年後見制度の低調な利用の実態からスタートし、今後増大する後見ニーズを満たせるのは、親族でもなく、専門職でもなく、市民後見人だと論証した上で、厚労省の「市民後見推進事業」の意義・概要に触れた後、次の文章が続く。
 「市民後見人を活用する先駆的な取り組みは、既に始まっている。例えば、東京都品川区では平成14年6月、品川区社協に品川成年後見センターを設置した。市民後見人を養成し、法律や福祉の専門家らが監督・支援する体制を整えており、自治体のモデルケースとして全国から注目されている。
 福岡県では、平成16年、公証人や企業OBらによる市民グループがNPO高齢者・障害者安心サポートネットを立ち上げ、平成18年から4回の市民後見育成研修を行ってきた。この3月末には、筑紫野市の委託で、国の市民後見推進事業として、全国初の市民後見人養成講座を実施した。地域住民と職業後見人、地元自治体、家裁の協働による「地域後見」を目指す。「その主役は市民後見人」(森山理事長)だ。住民の発意に基づく「成年後見の社会化」のモデルの一つとされ、全国から見学や視察が相次いでいる。」(写真登載 筑紫野市長から終了証を授与される市民  撮影 尾崎雄)。
 続いて、成年後見制度が身上保護を軸に、コペルニクス的転回を迫られている実情を説明、市民後見人を指導監督する「市民後見NPO」の必要性を説いている。そして、最後に後見NPOの弱点として事前規制や事後罰則のない性善説によるNPO法に依拠しているから、権利擁護の視点からは、公平性、信頼性、透明性を欠く。その欠陥を是正するため、「市民による市民のためのNPO監視機構」を設けるべきだと提案されている。例えば、NPO後見センターに調査部門を設け、業務内容やガバナンスに関する情報公開を求める仕組みである。
3  尾崎氏が当法人の研修現場をも観察されての提言である以上、謙虚に耳を傾ける必要がある。しかし、そのような監視機構は、現実の問題として直ぐにできるわけではない。それでは、後見NPOの弱点・リスクをどのようにしてカバーしていくか? 例えば、当法人のように組織内を分化して、特定の組織が指導監督を担うとか、研修の充実・強化や研修資料の整備等の方策を講じて、システム的に解決することも重要であるが、それだけでは十全でない。それには、会員の精神面の強化が必要である。すなわち、安心サポートネットの文化は、次のとおりであるから、その文化の醸成と定着こそが、最も効果的な方策ということになる。
第1 市民後見人としての自己研鑽と鍛錬
 第2 支え合いによる共生社会の実現
第3 地域住民のニーズの把握とスピード感による適切な対応
  この3つの課題の実現は、すべて後見NPOの弱点である公平性、信頼性の向上に直結するし、第3の課題は、透明性の弱点是正の効果がある。そして、何よりも、最大の弱点であるガバナンスの補強になることである。
4 文化の醸成と定着は、言うは易く、行うは難たし、である。従来不適正処理による信用失墜を防止するため、適正処理委員会を設置していたが、これを発展的に解消して、新たに委員会を設け、その委員会が後見研や安心の広場等を利用して、その啓発、周知、指導を行うシステムを構築する方針である。このシステムが十分な成果を上げるよう、皆さんのご協力をお願いしたい。
 そして、最後に強調したいのは、第2の課題と後見の社会化の関係である。
後見の社会化とは、後見制度を地域住民ないしは地域社会で担うことであるが、それが最も円滑に行われるのは、支え合いによる共生社会である。その中で、中心的役割を担うのは市民後見人であるから、第2の課題の重要性は明々白々である。そして、「地域包括ケアシステム」も共生社会の上に成立する。この意味で、当法人及び会員が、後見の社会化に大いに貢献するのを期待したい。

# by seinen-kouken | 2020-02-04 21:38

基盤つくり終了、令和で後見制度の大きな花を咲かせよう!

NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

理事長 森 山  彰

1、始めに

当法人は、平成1656日に創立、奇しくも新しい年号の令和元年55日に15周年の記念すべき節目を迎えることとなった。その間、当法人は成年後見制度の活性化を目標にして、3歩前進、2歩後退の着実な歩みを繰り返しながら、今日のような充実・発展の道をたどることができた。これは一重に、役員と会員の皆さんの並々ならぬご尽力と地域住民の皆様の温かいご支援・ご協力の賜物であるから、ここに深甚なる敬意と謝意を表したい。基盤つくり終了、令和で後見制度の大きな花を咲かせよう!_c0166418_21163972.png

ところで、15周年で、代替わりの大きな節目に際し、平成時代の歩みを振り返り、令和時代における事業展開を展望し、充実・発展の道を探ることは、極めて有意義なことである。

2、4つの活動指針と2つ基本理念

当法人は設立当初から、次の4つの活動指針基づきスタートした。

.個人の尊厳の保持と自立の支援、②.ボランティアを視野に入れた非営利活動。

.専門家によるネットワークの構築と後見支援、④.公的サービスの分担。

この活動指針は、福祉を標榜し、各専門分野のネットワークの構築等先進的で、類例がなかったので、当初からシステムつくりに追われた。

やがて、この指針だけでは、後見制度利用の低迷を打破し、活性化を図ることは困難だと判明。その実現策としては、全国どこの住民でも、容易に後見制度の利益を享受可能な新たな基本理念が必要だと痛感した。

そのため、最初に生み出された理念が、「判断能力の不十分な高齢者・障害者の皆さんが、いつでも、どこでも、容易に成年後見制度を利用して安心した生活を送ることのできる社会をつくろう!」という「地域後見の実現」と「その主役は市民後見人である。」とする考え方である。

次に生み出された理念が、「身上保護重視の後見」である。身上配慮義務を新設して身上保護の充実・強化を図る以上、この事務には、法律行為のみならず事実行為を含むとする事実行為包含説が相当だとする考え方である。

そこで、後見の実務上、これらの活動指針と基本理念に基づく適正・円滑な事務処理システムを考究して開発することが喫緊の課題となった。基盤つくり終了、令和で後見制度の大きな花を咲かせよう!_c0166418_21162222.png

この強い要請を受けて、研究・開発を重ね、長年の紆余曲折を経て、何とか出来上がったのが、「後見実務とその指導監督システム指針」(処理マニュアル)である。このシステム指針は、逐次実施に移され、当法人における適正・円滑な事務処理に大きな貢献をすることになっただけでなく、地域住民から厚い信頼が寄せられることとなった。

なお、このシステム指針における「地域後見の実現」と「身上保護重視の後見」の理念は、成年後見制度利用促進法における基本方針の柱として位置付けられたことは、「安心の広場」24号巻頭言で述べたとおりである。

3、平成における基盤づくりの成果

事件面で見てみよう。30年度の相談事件処理数が〇〇〇件、後見等申立て、各種契約締結、遺言等支援の30年度受託件数が〇○○件、同年度末までの後見人受任数が累計○○〇人、効力未発生の任意後見移行型や遺言執行の保有数が〇○○件にのぼり、かなりの水準に達している。

財務面でみても当法人は市町村依存ではなく、独立採算制であるが、事業収入や寄付等が寄与して、毎年黒字経営を続けており、不慮の事故に対する損害賠償金も相当額積み上げた。また、低所得者等対策の基金制度を設ける等安定した財政基盤の確立に成功した。

研修面でみても、職場研修を活発に行うとともに、市民後見人の育成面では、当法人独自の本格的育成研修を福岡で4回、熊本で1回、厚労省の市民後見養成研修は、筑紫野市と直方市で実施し、十分な実績を挙げ、研修に必要なノウハウを蓄積してきた。

以上のとおりの平成の実績を見る限り、お蔭様で当法人は曲がりなりにも、「しっかりとした基盤づくりができた」と評価できると思う。

4 令和での継承・発展基盤つくり終了、令和で後見制度の大きな花を咲かせよう!_c0166418_21165201.png

これまでの基盤づくりの成果を令和ではどのように継承し、発展させるべきかである。熟慮して到達した結論は、当面は、かなりの年数を費やそうとも、次に掲げる平成30年度の重点目標を継承し、その達成に向けて全力を傾注することである。

 1 任意後見移行型を基軸とした受任体制の整備・拡大

 この移行型全体がが身上保護重視の後見であることは勿論であるが、この目標の到達点は、任意後見研究会のメンバーが、改善後の移行型に基づき契約締結の支援能力を修得した段階としたい。

2 人材の育成とその活動支援

 この目標は最重要かつ永続的課題である。各種研修の充実は勿論だが、安心サポートネットの文化の浸透を図りつつ、3歩前進2歩後退の精神で各種事業を拡大しつつ、その過程で人材の確保と育成を図ることが肝要であろう。

3 地域後見 地区拠点つくりの推進

  各地域における相談体制から地区の拠点づくりを進め、それをベースにNPO法人を設立、促進法のいう中核機関を受任するか又は地域連携ネットワークに参加することが目標となる。この観点からは、宗像市、糸島市、次いで、春日市等の拠点づくりの支援も重要である。また、大地から芽を出したばかりの福岡市東区、早良区等の各区、久留米市についても、その芽を大切に育てたい。  

もう1つ、常に配慮すべき課題として「安心サポートネット・グループ」の安定した運用の確保がある。 グループに帰属する安心サポートネット熊本については、情報交換を密にして、その安定的運営を支援することが重要である。同じく安心サポートネット生活については、充実した生活支援事業が行えるよう側面から援助することが必要である。

  なお、令和時代の新たな課題として、親族後見を支援する活動とか低所得者層対策としての基金の充実に真正面から向き合うことも重要となろう。

5 大きな花が咲く

「初春の令月にして、気淑く風和ぎ・・・・を出典として、「令和」の時代基盤つくり終了、令和で後見制度の大きな花を咲かせよう!_c0166418_19324130.jpgに代替わりした。この意義を当法人に当てはめて説明すると、「令和の訪れとともに、当法人と会員及び支援者の皆さんの明日への希望が、見事に咲き誇る梅の花のように、大きく花を咲かせることができるように!」という願いが込められている。その願い通り、当法人の将来も、これまでの基盤つくりの上に、大きく奇麗な花が咲き誇ってもらいたいものである。


# by seinen-kouken | 2019-06-29 18:12

低所得者層にも成年後見制度利用の恩恵を!

低所得者層にも成年後見制度利用の恩恵を!
安心サポートネット基金を充実しよう!
1 長寿社会と成年後見制度の役割
 日本における平均寿命も毎年伸びて、100歳を超える人達も続出、まさに世界に先駆けた超長寿社会の到来である。ただし、すべて長寿者が、身体的にも、精神的にも、健康で迎えていれば、こんなに素晴らしいことはない。しかし、世の中には低所得者層にも成年後見制度利用の恩恵を!_c0166418_20334990.png
健康で、なに不自由なく長寿を謳歌する人達も少なくないが、その反面、長寿になるに従い、その負の部分として、身体能力や判断能力の低下に苦しみ、それが原因で、自立生活が困難となった人達が、続出していることも事実である。この現象は、少子高齢・核家族・無縁社会の同時進行により、益々深刻の度を加えている。
 成年後見制度は、このような自立生活が困難な人達を支える制度である。この制度には、法定後見と任意後見の2種類がある。法定後見は、既に判断能力の低下した者に対する保護支援策であり、任意後見は、判断能力低下前に、将来の判断能力の低下に備えて、本人が受任者との契約で取り決める保護支援策である。更に同じ類型として、将来の身体能力の低下に備える保護支援策として「後見型委任契約がある。この契約は、任意後見契約と連結して契約すると、「任意後見移行型」となり、将来の身体能力の低下ないしは判断能力の低下という二大不安に悩む高齢者の保護支援策として機能する。したがって、この移行型は、「転ばぬ先の杖」として大多数の高齢者に対し安心を与える素晴らしい制度と言っても、言い過ぎではないと思う。しかし、現在のところ、これらの保護支援策が、長寿社会の負の部分の受け皿として、十分に利用されているかといえば、残念ながら、否である。なんとか利用促進を図ろうと、平成28年には、「成年後見制度利用促進法」という法律が制定された程である。
2 低所得者層向けの利用支援事業
 これらの制度の利用の低迷には、更に、もう一つの長寿社会の負の部分が絡んでいる。それは、長寿になれば成る程、不足しがちな年金と決して豊かでない蓄えが一層目減りして、生活に不安を抱える高齢者・障害者が増加していることである。これらの低所得者層は、制度利用に必要な費用や後見人報酬の負担ができないから、利用したくても、利用できない状況にある。低所得者層にも成年後見制度利用の恩恵を!_c0166418_15231453.png
 現在、このような低所得者層を対象として、市町村では、成年後見制度利用支援事業として後見申立て費用や後見人等報酬の一部を助成している。しかし、この支援事業自体が十分に知られていない上、利用上も制約が多く、市区町村側の支援の熱意も不足する等、いろいろ問題があって、支援事業の利用者は、極めて低迷している。この憂慮すべき状況を打開するには、国や自治体が、低所得者向けの抜本的な利用促進策を打ち出すことが必要である。しかし、現実にはその気配は、少しも見られない。
3 後見報酬支援の強化と「安心サポートネット基金」の充 実
 国や自治体による本格的な支援が実現するまでは、成年後見を事業目的とする関係団体が、当面、適宜に後見支援基金を創設して、低所得者による制度利用を支援することが考えられる。全国的には若干の法人が、既に基金を創設したが、運用が問題であると聞く。
 当法人は、26年6月、「安心サポートネット基金」を創設した。この基金の運用は多目的であって、1つ目は、障害者後見と任意後見移行型の問題点解決の支援、2つ目は、後見人等(職務担当者)の報酬支援である。
 基金創設5年間の活動は、もっぱら当法人と任意後見委任者の絆つくり(信頼関係の醸成)事業に焦点が置かれた。現在まで5回の交流会が実施され、毎回約40名の参加があり、評判も良くて、絆つくりとしては大成功だった。しかし、「安心サポートネット基金」の役割は、低所得者層の制度利用をしようにも、後見報酬が支払えない人達を支援することであるから、その主たる活動を後見報酬の支援事業に移すことが必要である。そのためには、本基金の大幅積み増しが必要となる。この度、理事会の決議により当法人の運営資金の一部が基金に組み込まれたが、本基金の財源を法人内支援者の寄付金と運営資金の組入れに依存するだけでは、多くを望めず、限界がある。基金財源の安定運用には、対外的に本基金をアピールして、外部者からの大型寄付金を確保することが重要である。そのためには、低所得者層に対する後見報酬支援事業の実績が必要なので、今後の基金運用の方針は支援実績を積み重ね、その実績をアピールして本基金の安定財源の確保につなげることとしたい。低所得者層にも成年後見制度利用の恩恵を!_c0166418_15213446.png

 長寿社会では、身体能力ないし判断能力の低下による自立生活の困難な低所得者層の増加は避けられない。そして,長寿になればなる程、長寿者の資産は減少を続け、低所得なるがゆえに、成年後見制度を利用して安心した生活を送ることができない人達が増加するだろう。このような悲観的事態に陥らないよう、微力を尽くして、これらの低所得者層にも後見制度の恩恵が受けられるよう努力することが、福祉を標榜する当法人に与えられた使命だと思う。このことを肝に銘じて本基金の運用に当たりたい。


# by seinen-kouken | 2019-01-14 18:35

成年後見制度利用促進法への期待と不安

                     平成28年5月18日
成年後見制度利用促進法への期待と不安
1、基本方針の柱
 平成28年4月8日衆議院本会議で「成年後見制度利用促進法」が成立した。こ の法律は、自民、民進、公明等各党の賛成多数で可決成立した議員立法である。唐突に私たちの目の前に突き付けられた感のある法律ではあるが、この法律の内容をみて驚いた。当法人がこれまで地域住民の需要(ニーズ)は、「地域後見の実現」と「身上監護重視」の後見にあるとして、鋭意この2大ニーズに対応する理念を確立し、諸方策を実施してきたが、その当法人の理念や施策が、その儘、この法律の基本方針の柱となっているからである。成年後見制度利用促進法への期待と不安_c0166418_22233543.jpg

その注目すべき第1の柱は、成年後見制度利用促進の基本理念として、従前の「残存能力の活用」に代えて、新たに身上の保護(身上監護)の重視が掲げられたことである。そして、その基本方針の施策として、医療、介護等を受ける意思決定が困難な被後見人等が、円滑に必要な医療、介護等を受けられるよう、後見人等の事務の範囲について検討・見直しを図ることや任意後見制度の積極的な活用を図るための措置を講じること等が明らかにされた。
更に、注目すべき第2の柱は、地域における人材の確保策として、市民後見人の育成と活用を図る施策が織り込まれ、これに関連し、研修の機会確保や成年後見等実施機関(後見支援組織)の育成、活用及び活動支援等の施策が明記された。
この2つの柱が、当法人の目指す理念や重要施策と同じであることは、先行する当法人の理念や施策について、この法律が後追いの形で認知したものと判断できる。このことは、当法人の理念や重要施策が正しかったことの証明であり、また、当法人が地域住民のニーズに対応し、先駆的な活動をしてきたことを証明する証でもある。

2 基本理念及び基本方針に基づく施策等
 この法律の概略を述べると、まず、判断能力の不十分なことにより、財産管理や日常生活等に支障がある者を社会全体で支え合うことが高齢社会における喫緊の課題であるが、これらの者を支える重要な手段である成年後見制度が十分に利用されていないことを指摘し、次に、この制度の利用促進を図るためには、次に掲げる3つの基本理念を踏まえて行われるべきことを明らかにした。
(1)成年後見制度の理念の尊重
(2)地域の需要に対応した成年後見制度の利用の促進
(3)成年後見制度の利用に関する体制の整備
 そして、この3つの基本理念にかかる基本方針に基づく施策等を詳細に明らかにして、具体的にその指針を明確にしているが、それを分かり易く集約すると、その第1の柱が「身上監護重視」の後見であり、第2の柱が「地域後見の実現」ということである。

3 推進方法等
 この法律の利用促進の基本理念や施策等については、我が意を得たりで、大賛成であるが、その推進体制及び方法については不安が付きまとう。
 政府が利用促進に関する施策を総合的に策定・実施し、そのために必要な法制上又は財政上の措置を速やかに講じる責務があることは勿論であるが、それとともに、政府は「成年後見制度利用促進基本計画」を策定し、これを閣議決定することが明記されている。
 この基本計画が、推進体制の中枢を担うと思われるが、それはどんな仕組みで策定されるか?この策定は、内閣府に設置される「成年後見制度利用促進会議」が行う。この会議の会長は内閣総理大臣、委員は、内閣官房長官、法務大臣、厚生労働大臣、総務大臣が名を連ねるという豪華メンバーであるが、制度に通じた専門家ではない。したがって、実質的にこの会議の運営に当たるのは、内閣府に設置される委員会で、この委員会が審議や取りまとめの役目を果たすと思われる。
 制度の利用促進が喫緊の課題であるから、この法律の施行が5月であり、それから起算して2年内に同会議は、その役目を果たし、廃止されることになっている。まさにスピード審議である。そして、その後は、厚労省が庶務を処理する利用促進会議と専門家会議が後を引き継ぐことになる。

4 関係省庁の寄せ集め
 本来なら、成年後見制度法制の主管庁は法務省であるから、同省が制度の利用促進策を講ずべきであるが、医療、介護面に疎く、市民後見人の育成と活用は縁遠いという事情がある。他方、医療、介護を主管し、制度利用の最大の恩恵を受ける厚労省は、利用促進の音頭を取りたくとも、主管庁でないという負い目がある。そんなこんなで、どちらも消極姿勢で推移した。それでしわ寄せをまともに受けたのは、判断能力の不十分な高齢者,障害者であり、地域住民の人達である。そこで、業を煮やして出来上がったのが、議員立法よるこの法律だと憶測する。したがって、上述のように、関係省庁の寄せ集めの中で審議され、実施されることとなったが、各省庁の利害もあって、「地域住民のニーズに応える有効な施策」が打ち出せるか?打ち出せない可能性も否定できない。

5 本法律の成果に対する期待
 この法律は、成年後見制度に対する地域住民の強いニーズに応えるために必要不可欠である。また、この法律がこれまで積み上げた当法人の重要施策の正当性を保証するだけでなく、将来にわたって、当法人が、誇りと自信をもって「地域後見の実現」と「身上監護重視」の2大施策を推進する源泉として機能し、その職務遂行にあたっても、挑戦の勇気とやり甲斐を与えてくれる大いなる糧となるから、今後はこの法律の基本理念及び関連する施策の審議、具体化が、万事順調に進捗し、実りある成果が得られるよう大いに期待したい。
                           以 上

# by seinen-kouken | 2019-01-14 18:12

任意後見移行型と転ばぬ先の杖


NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

                理事長 森 山 彰

1 任意後見移行型と「転ばぬ先の杖」

皆さんもご承知のとおり、安心サポートグループは、後見人等の受任体制の基軸を法定後見から任意後見移行型に移行しました。その理由の第1は、任意後見移行型が自己決定権の尊重の理念に基づく魅力的な制度であるからです。そして、理由の第2は、現代の長寿社会の顕著な現象として、私達はすべて、1.身体能力の低下か、又は、2.判断能力の減退により自立した生活が困難となる宿命を背負っていますが、この移行型が、1.2.の双方の保護支援策となるからです。

何故双方の支援策になるかと言えば、この契約は、前後2つの契約で構成されていて、前の契約が後見型委任契約(従来の名称は財産管理等委任契約)で、1に対応する支援策、後の契約が任意後見契約で、2.に対応する支援策だからです。したがって、この移行型さえ締結しておけば、将来どんな事態になろうとも、自立した生活が保障されるから、「安心!」という意味で、「転ばぬ先の杖」だと言い切れると思います。

2 移行型の改善

従前の移行型は、財産管理偏重で、説明しにくく、問題点が多いと批判されていました。そこで、この「移行型」を「わかり易く」、「親しみ易く」、「安心して支援を受け易く」という視点から、改善する必要があります。

この批判の1つ目は、文書を基にした口頭説明では、複雑過ぎて、わかりにくいという指摘です。そこで、説明者も説明し易く、委任者本人も理解し易くするために、移行型を図解して、その図解図面で説明する方式を採用して、この解決を図りました。2つ目の批判は、従来の移行型は財産管理偏重で、親しみにくいという指摘です。そこで、支援内容を「身上保護重視」の観点から大幅刷新を図った結果、両契約とも同質の身上保護型となり、親しみ易くなりました。

そして、3つ目の批判は、委任者本人の指導監督機能が弱いため、適正な支援を受けにくいという指摘です。この欠陥を是正するためには、指導監督に適した報告システムの構築が不可欠ですが、と同時に、法人が受任者であれば、当法人のように、法人自身が本人側に立って、職務担当者を指導監督できる仕組みを構築できるので、「安心して支援を受け易く」なります。そうだとすると、移行型の受任は、当法人のような仕組みを持つ法人が、最も適応性があるように思います。

3 万全な「転ばぬ先の杖」

「転ばぬ先の杖」とは、準備が無くて、失敗するのは駄目で、前々から準備しておけば、失敗せずに安心できる!という意味だから、身寄りのない高齢者にとって「移行型」を締結しただけでは、立派な「杖」といえても、万全な「杖」とまでは言えません。この移行型を万全の「転ばぬ先の杖」とするためには、この改善された移行型に「死後事務委任契約を」を連結することが必要です。人が死亡すると、どんなに整理の上手な人でも、各種サービス料金の支払債務や遺品の処分等の残務整理や葬儀・納骨の祭祀事務が残ります。この死後事務を処理してくれる相続人等がいない限り、この死後事務委任契約」を締結していないと、誰も処理する者がなくて、死後の不安が解消しないからです。

更に、相続人が複数いても、全く相続争いが無い場合は例外として、相続争いが生じたら、遺産が宙ぶらりんになり、相続が骨肉の争いの始まりとなります。この悲劇を防止するためには、遺言が必要で、遺言さえあれば、「転ばぬ先の杖」は万全となり、安心です。

安心サポートネットグループは、「名は体を表す」の言葉のとおり、地域住民の皆さんの安心を追求することをその使命としています。当グループが受任の軸足を「移行型」に移行したということは、会員各位がこれらに関する幅広い知識とノウハウを習得に努められ、改善後の「移行型」をベースに、死後事務委任契約の締結や遺言支援を実践して、地域住民の皆さんの安心の確保と保全に万全を期することだと思います。この目標は安心サポートネットグループの重点目標ですから、是非とも、組織を挙げてこの実現にご尽力願いたいものと切望しています。


# by seinen-kouken | 2018-07-15 17:34