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利用し易く・親しみ易い成年後見制度に向けて! 民法の成年後見法制の改正が不可欠

利用し易く・親しみ易い成年後見制度に向けて!

民法の成年後見法制の改正が不可欠

NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

理事長 森 山  彰

 今期は、第8波のコロナ禍も鎮静化に向かった時期で、最大の行事は「久留米地区市民後見人育成研修」を無事終了して、その履修者を中心として「市民後見NPO」を立ち上げることでした。この研修も予定通り順調に進み、昨年129日には、無事閉講式を迎え、市民後見人候補35名を誕生させることができました。そして、本年17日には、早くも初回の「市民後見NPO設立準備会」の開催にこぎつけました。以後精力的に協議を行い、312日には同準備会を設立発起人会に切り替えて、設立総会に提案する案件をすべて全員一致で可決承認し、49日には、29名の参加者を得て、設立総会を開催、設立趣意書」「定款」、「活動計画書・活動予算書」の可決承認及び「役員選任」を行って、後は、県に対する設立認証申請と法務局に対する設立登記を残すまでとなりました。

これも、設立に携わった関係者は勿論のこと、当法人の役員・会員の皆さんが心を合わせて、ご支援・ご協力をいただいた結果でありますから、心から敬意と謝意を申し上げます。

2 さて、皆さんもご承知の通り、利用低迷の現状を何とか打開しようと、平成28年成年後見制度利用促進法ができたわけですが、その基本計画では、利用低迷の原因は、「意思決定支援や身上保護等の福祉的視点に乏しい運用がなされてきたことに起因している。」として、その改善を図る必要性が指摘されています。

  しかし、福祉に乏しい運用の改善だけで、成年後見制度が利用し易く、親しみ易くなるかといえば、それは絶対無理です。成年後見法制を見直して、民法改正まで行うことが不可避だからです。

 そこで、令和43月に閣議決定された第2期基本計画では、民法の改正を含めて制度見直しが織り込まれました。現在改正対象になっている課題は、①、利用者が必要な範囲、期間だけ制度利用ができるようにすること、②、補助、保佐、成年後見の3類型の一元化、③、後見人の円滑な交代を可能にすること、④、報酬基準の明確化や負担の軽減を図ること等です。

 それに、もう一つ、強力に民法改正を迫るのが障害者権利条約がらみです。同条約第12条(法律の前に等しく認められる権利)に関する障害者権利委員会の審査に対し、日本政府は我が国の立場を回答していますが、同委員会の総括所見として、4年10月に次のような厳しい勧告を受けました。

a)意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が、法律の前に等しく認められる権利を保障するために民法を改正すること。

b)・・・全ての障害者の自律、意思及び選好を尊重する支援を受けて意思決定をする仕組みを設置すること。

この勧告は、日本政府が勧告に従うまで継続される見込みなので、我が国の代理・代行制度は、基本的に廃止され、成年後見や保佐の類型は姿を消すことになると思います。

4 現在任意後見制度の利用率は法定後見に比べ、大変低いのですが、ここにきて、にわかに注目を集めています。なぜなら、任意後見制度は、自己決定権の尊重の理念に基づいた制度ですから、法定後見のように存続が危ぶまれることは無いからです。近頃は任意後見のフォーラムが盛んになり、成年後見を牽引した学者にも、任意後見最優先の論調が見られるようになりました。

  当法人は、幸い平成27年から受任体制の基軸を法定後見から任意後見移行型に移行して、諸々の改善を図り、委任者の意思・選好を尊重して、契約条文作りを行っています。それで、代理・代行制度の廃止・縮小の影響は、最小限に止まるものと考えています。

5 現在の民法の成年後見法制は、財産管理を中心にしています。これに対し、当法人の活動指針は、福祉、すなわち個人の尊厳と自立の支援であります。そのため、両者における身上保護、すなわち生命(医療)、身体(介護)、生活に関する支援の考え方には、相当の距離感が感じられます。

 この度の民法改正では、この医療、介護、生活に関する意思決定支援の課題をどのように取り扱うか、最大の関心事です。現在の少子・高齢化、無縁社会で生活する圧倒的大多数の地域住民が求めるニーズは、意思決定支援による身上保護重視の後見です。このような住民の強いニーズに対応して、同制度の活性化を図るためには、しっかりと福祉の理念を成年後見制度の礎として民法の中で規範化する必要があると考えます。この度の民法改正は、民法の中に福祉の理念を規範化する絶好の機会なので、是非とも、その実現を図りたいものです。      以 上


# by seinen-kouken | 2023-07-30 11:34 | 随想

利用し易く・親しみ易い成年後見制度に向けて! 民法の成年後見法制の改正が不可欠

利用し易く・親しみ易い成年後見制度に向けて!

民法の成年後見法制の改正が不可欠

NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

理事長 森 山  彰

 今期は、第8波のコロナ禍も鎮静化に向かった時期で、最大の行事は「久留米地区市民後見人育成研修」を無事終了して、その履修者を中心として「市民後見NPO」を立ち上げることでした。この研修も予定通り順調に進み、昨年129日には、無事閉講式を迎え、市民後見人候補35名を誕生させることができました。そして、本年17日には、早くも初回の「市民後見NPO設立準備会」の開催にこぎつけました。以後精力的に協議を行い、312日には同準備会を設立発起人会に切り替えて、設立総会に提案する案件をすべて全員一致で可決承認し、49日には、29名の参加者を得て、設立総会を開催、設立趣意書」「定款」、「活動計画書・活動予算書」の可決承認及び「役員選任」を行って、後は、県に対する設立認証申請と法務局に対する設立登記を残すまでとなりました。

これも、設立に携わった関係者は勿論のこと、当法人の役員・会員の皆さんが心を合わせて、ご支援・ご協力をいただいた結果でありますから、心から敬意と謝意を申し上げます。

2 さて、皆さんもご承知の通り、利用低迷の現状を何とか打開しようと、平成28年成年後見制度利用促進法ができたわけですが、その基本計画では、利用低迷の原因は、「意思決定支援や身上保護等の福祉的視点に乏しい運用がなされてきたことに起因している。」として、その改善を図る必要性が指摘されています。

  しかし、福祉に乏しい運用の改善だけで、成年後見制度が利用し易く、親しみ易くなるかといえば、それは絶対無理です。成年後見法制を見直して、民法改正まで行うことが不可避だからです。

 そこで、令和43月に閣議決定された第2期基本計画では、民法の改正を含めて制度見直しが織り込まれました。現在改正対象になっている課題は、①、利用者が必要な範囲、期間だけ制度利用ができるようにすること、②、補助、保佐、成年後見の3類型の一元化、③、後見人の円滑な交代を可能にすること、④、報酬基準の明確化や負担の軽減を図ること等です。

 それに、もう一つ、強力に民法改正を迫るのが障害者権利条約がらみです。同条約第12条(法律の前に等しく認められる権利)に関する障害者権利委員会の審査に対し、日本政府は我が国の立場を回答していますが、同委員会の総括所見として、4年10月に次のような厳しい勧告を受けました。

a)意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が、法律の前に等しく認められる権利を保障するために民法を改正すること。

b)・・・全ての障害者の自律、意思及び選好を尊重する支援を受けて意思決定をする仕組みを設置すること。

この勧告は、日本政府が勧告に従うまで継続される見込みなので、我が国の代理・代行制度は、基本的に廃止され、成年後見や保佐の類型は姿を消すことになると思います。

4 現在任意後見制度の利用率は法定後見に比べ、大変低いのですが、ここにきて、にわかに注目を集めています。なぜなら、任意後見制度は、自己決定権の尊重の理念に基づいた制度ですから、法定後見のように存続が危ぶまれることは無いからです。近頃は任意後見のフォーラムが盛んになり、成年後見を牽引した学者にも、任意後見最優先の論調が見られるようになりました。

  当法人は、幸い平成27年から受任体制の基軸を法定後見から任意後見移行型に移行して、諸々の改善を図り、委任者の意思・選好を尊重して、契約条文作りを行っています。それで、代理・代行制度の廃止・縮小の影響は、最小限に止まるものと考えています。

5 現在の民法の成年後見法制は、財産管理を中心にしています。これに対し、当法人の活動指針は、福祉、すなわち個人の尊厳と自立の支援であります。そのため、両者における身上保護、すなわち生命(医療)、身体(介護)、生活に関する支援の考え方には、相当の距離感が感じられます。

 この度の民法改正では、この医療、介護、生活に関する意思決定支援の課題をどのように取り扱うか、最大の関心事です。現在の少子・高齢化、無縁社会で生活する圧倒的大多数の地域住民が求めるニーズは、意思決定支援による身上保護重視の後見です。このような住民の強いニーズに対応して、同制度の活性化を図るためには、しっかりと福祉の理念を成年後見制度の礎として民法の中で規範化する必要があると考えます。この度の民法改正は、民法の中に福祉の理念を規範化する絶好の機会なので、是非とも、その実現を図りたいものです。      以 上


# by seinen-kouken | 2023-07-30 11:34 | 随想

熊本地区の市民後見人育成研修の成功を祈念して!

熊本地区の成年後見制度の担い手

市民後見人育成研修の成功を祈念して

NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

理事長 森 山 彰

、安心サポートネットグループの業務は、相談者との対面により後見等のニーズを把握し、対面に基づき事務処理を行って、相談者の安心・安全を提供する業務ですから、令和2年以降、第7波に及ぶコロナ禍のため、相談者との関係が断ち切れたように疎遠になりますと、事業活動が大きく制約を受け、沈滞せざるを得ません。それにもかかわらず、何とか各事業を支障なく遂行されてきたことは、井芹新理事長のリーダーシップのもと、安心サポート熊本の全役員及び会員の皆さんが、強い使命感を持って努力された結果でありまして、ここに安心サポートネットグループを代表し、心から敬意と謝意を表したいと思います。

  さて、安心サポート福岡でも、コロナ禍で苦戦しています。事件受託が低迷しているほか、コロナ禍における緊急事態宣言により令和36月開催予定の5回市民後見人育成研修9月に延期を余儀なくされ、その9月開催も同じ理由で再延期となりました。我慢を重ね、何とかコロナ禍の波の鎮静化した期間を捉えて、やっと今年の18日に開講式を迎えることができました。本研修は、49日の閉講式まで10日間、総研修時間50時間で、36名の研修修了者に修了証書を手渡すことができました。

  ご承知の通り、当法人は今年21日に久留米出張所を開設しました。この出張所を拠点に、「NPO法人安心サポートネット久留米」(仮称)を設立する計画です。現在その基盤づくりのため、731日に開講した久留米地区市民後見人育成研修を実施中です。研修のレベルは第5回研修と全く同じです。

 久留米のNPO法人の設立には、平成21年行われた「熊本版市民後見人育成研修」において、研修履修者の有志が相語らって、安心サポート熊本を設立した、その方式に見習うこととしています。地域後見の見地からも、何とか実現にこぎつけたいと考えています。

さて、去る325第二期成年後見制度利用促進基本計画が、「尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進」というサブタイトル付きで、閣議決定されました。

この第二期計画で、特に注目を引くのは、優先して取組む事項が明らかになったことです。その第1が「任意後見制度の利用促進」であり、第2は、「後見人等の担い手の確保・育成の推進」であります。安心サポートグループは、この第1と第2の優先事項は、この数年来、事業計画の重点目標として、その実現に取り組んでまいりました。

1の任意後見の利用促進については、平成27年以降受任体制の基軸を法定後見から「任意後見移行型」に移行し、移行型それ自体を身上保護重視、意思決定支援の観点から改良して、利用者に分かり易く、親しみ易い任意後見制度として利用促進を図ってきました。

2の優先事項は、2つの課題が含まれています。その1つ目の課題は、市民後見人や法人後見を支える職務担当者、つまり後見制度の担い手の確保・育成の推進であり、2つ目の課題は、法人後見の主体、すなわち法人後見を事業目的とする法人の設立支援や育成です。

安心サポート熊本は、本年9月から第3回市民後見人育成研修を開催する予定だったところ、コロナ禍のため、残念ながら3か月の延期を余儀なくされました。今回の研修は、安心サポート熊本にとっても、処理体制の充実、後継者育成等の観点から大変重要な意義のある研修ですから、是非とも成功させる必要があります。その成功要件として、第1に研修カリキュラムですが、それは充実した科目と講師で編成され、魅力的ですから大丈夫として、第2の受講生の募集活動ですが、これは、コロナ禍を打ち負かす程強力であることが必要であります。

熊本の役員及び会員の皆さんにおかれては、なにとぞここに焦点を絞り、知恵を絞って、強力で効果的な募集活動を展開されますよう期待しています。当法人も、募集活動には、側面からできるだけ応援を行う方針で臨みますので、ウイズコロナ下の研修として是非とも成功していただくよう念願しています。


# by seinen-kouken | 2022-10-23 12:23

熊本地区の市民後見人育成研修の成功を祈念して!

熊本地区の成年後見制度の担い手

市民後見人育成研修の成功を祈念して

NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

理事長 森 山 彰

、安心サポートネットグループの業務は、相談者との対面により後見等のニーズを把握し、対面に基づき事務処理を行って、相談者の安心・安全を提供する業務ですから、令和2年以降、第7波に及ぶコロナ禍のため、相談者との関係が断ち切れたように疎遠になりますと、事業活動が大きく制約を受け、沈滞せざるを得ません。それにもかかわらず、何とか各事業を支障なく遂行されてきたことは、井芹新理事長のリーダーシップのもと、安心サポート熊本の全役員及び会員の皆さんが、強い使命感を持って努力された結果でありまして、ここに安心サポートネットグループを代表し、心から敬意と謝意を表したいと思います。

  さて、安心サポート福岡でも、コロナ禍で苦戦しています。事件受託が低迷しているほか、コロナ禍における緊急事態宣言により令和36月開催予定の5回市民後見人育成研修9月に延期を余儀なくされ、その9月開催も同じ理由で再延期となりました。我慢を重ね、何とかコロナ禍の波の鎮静化した期間を捉えて、やっと今年の18日に開講式を迎えることができました。本研修は、49日の閉講式まで10日間、総研修時間50時間で、36名の研修修了者に修了証書を手渡すことができました。

  ご承知の通り、当法人は今年21日に久留米出張所を開設しました。この出張所を拠点に、「NPO法人安心サポートネット久留米」(仮称)を設立する計画です。現在その基盤づくりのため、731日に開講した久留米地区市民後見人育成研修を実施中です。研修のレベルは第5回研修と全く同じです。

 久留米のNPO法人の設立には、平成21年行われた「熊本版市民後見人育成研修」において、研修履修者の有志が相語らって、安心サポート熊本を設立した、その方式に見習うこととしています。地域後見の見地からも、何とか実現にこぎつけたいと考えています。

さて、去る325第二期成年後見制度利用促進基本計画が、「尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進」というサブタイトル付きで、閣議決定されました。

この第二期計画で、特に注目を引くのは、優先して取組む事項が明らかになったことです。その第1が「任意後見制度の利用促進」であり、第2は、「後見人等の担い手の確保・育成の推進」であります。安心サポートグループは、この第1と第2の優先事項は、この数年来、事業計画の重点目標として、その実現に取り組んでまいりました。

1の任意後見の利用促進については、平成27年以降受任体制の基軸を法定後見から「任意後見移行型」に移行し、移行型それ自体を身上保護重視、意思決定支援の観点から改良して、利用者に分かり易く、親しみ易い任意後見制度として利用促進を図ってきました。

2の優先事項は、2つの課題が含まれています。その1つ目の課題は、市民後見人や法人後見を支える職務担当者、つまり後見制度の担い手の確保・育成の推進であり、2つ目の課題は、法人後見の主体、すなわち法人後見を事業目的とする法人の設立支援や育成です。

安心サポート熊本は、本年9月から第3回市民後見人育成研修を開催する予定だったところ、コロナ禍のため、残念ながら3か月の延期を余儀なくされました。今回の研修は、安心サポート熊本にとっても、処理体制の充実、後継者育成等の観点から大変重要な意義のある研修ですから、是非とも成功させる必要があります。その成功要件として、第1に研修カリキュラムですが、それは充実した科目と講師で編成され、魅力的ですから大丈夫として、第2の受講生の募集活動ですが、これは、コロナ禍を打ち負かす程強力であることが必要であります。

熊本の役員及び会員の皆さんにおかれては、なにとぞここに焦点を絞り、知恵を絞って、強力で効果的な募集活動を展開されますよう期待しています。当法人も、募集活動には、側面からできるだけ応援を行う方針で臨みますので、ウイズコロナ下の研修として是非とも成功していただくよう念願しています。


# by seinen-kouken | 2022-10-23 12:23

市民後見人の数を飛躍的に増加させよう!

市民後見人の数を飛躍的に増加させよう!

NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

理事長 森 山  彰

1 去る91日・2日、さわやか福祉財団が主催した「生きがい・助け合いサミットin東京」(開催場所・プリンスホテル新高輪・国際館パミール)におけるパネル・デスカッションに登壇者として招聘された。

会場参加者1500名、オンライン視聴者3000人の大規模イベントである。小生が参加する分科会のテーマは、「身上保護中心の市民後見をどうように広めるか」である。司会は大森彌東大名誉教授、発表者は、全国で実力トップクラスの3市民後見NPOの代表者、それに内閣官房梶野参事官が参加した。

2 そこで、小生の登壇者としての論旨は、次の4つのポイントの実践により、地域共生社会に向け、市民後見人を飛躍的に増加させる必要性を力説した。

1のポイントは、「地域後見」の理念の実践である。当法人は、成年後見制度の利用低迷を打開するため、「全国津々浦々、いつでも、どこでも、容易に成年後見制度を利用し、安心して生活することのできる社会を構築しよう!その主役は「市民後見人!」とする地域後見の理念を提唱したこれに基づき当法人は、福岡市をはじめ各地域で11回にわたる本格的な「市民後見人育成研修」を実施、約500名の市民後見人を誕生させ、その育成と活用に尽力してきた。

2のポイントは、制度利用者のニーズに応えるため、「後見事務処理の範囲を法律行為だけに固執することなく、本人の身上に対応した適切な支援であれば、事実行為も含まれる。」とする「身上保護重視の後見」の理念を提唱し、実践したことである。この結果、「介護上の同意や医療上の同意、又は同行支援や見守り等の寄り添い行為に幅広く対応して、身上保護の実効性の確保と信頼性の向上に大きく寄与することができた。

第3のポイントは、上述のような優れた資質を有する市民後見人を多数誕生させるには、どんな仕組みがふさわしいかである。

市民後見人の最小限の要件は、社会貢献に意欲があり、一定水準の市民後見人育成研修を履修した者である。その市民後見人には、大別して2種類がある。1つは、個人が家庭裁判所から後見人を受任する市民後見人受任型、もう1つは、法人が受任、市民後見人が事務処理をする法人受任・市民後見人処理型である。

前者は、平成23年スタートの厚労省の市民後見推進事業に採用された仕組みであるが、バックアップのない市民後見人の事務処理には信頼が得られず、受任数は僅かに止まっている。これに対し、後者は、法人自体が後見人を受任し、その後見事務は市民後見人たる職務担当者が処理し、それを法人自体が指導監督する仕組みであるから、法人からの多様なバックアップを受ける上、永続性や弾力性等法人後見のメリットも享受できるので、市民後見人は、後者の法人後見型が多数を占める。したがって、利用促進法第2期基本計画では、後者の法人受任型の普及を主とし、前者の個人受任型を従として推進するのが相当である。

4のポイントは、市民後見人を全国に着実に広めるためには、現在どんな課題があり、それらをどのように解決すべきかである。

法人受任・市民後見人処理型として活動している法人は、現在、主として➀社会福祉協議会(以下「社協」という)と、②法人後見を事業目的とする市民後見NPOである。

➀の社協には、社協自体が法人後見を担う直営方式と、社協とは別にNPOを設立して法人後見を行うNPO方式の2種類が見られる。直営は小・中規模社協に多く、後見の取扱いが稀か又は容易な事件が中心で、処理能力が貧弱である。これに対し、NPO方式は大規模社協が中心で、処理能力は高く、住民の信頼も得ている。そこで、課題は直営方式における処理能力の強化であるが、いろいろと制約があり、単独での強化は見通せないので、複数の社協が共同して、NPOを立ち上げ、法人後見を実施するのが相当であろう。

これに対し、②の市民後見NPOには、自治体の財政支援を受ける支援型NPOと民間の自立型NPOがある。一般論では、双方とも事業運営に安定性と柔軟性があって、複雑困難な事件の処理能力を有し、地域住民の信頼も得やすい。特に、自立型の市民後見NPOだと、当法人のように、あちこちで市民後見人育成研修を開催して、多数の市民後見人を誕生させ、又は特定地域に限定せず、自在に市民後見NPOを立ち上げて、市民後見人増加の基盤づくりができる。したがって、幅広く市民後見人を増加させる方策としては、自治体支援型より自立型市民後見NPOの方が優れている。ただし、課題としては、自立型市民後見NPOには、財政基盤が不安定だったり、処理能力が不十分だったり、成長未熟なNPOが多い。これらの課題解決には、NPO自体のたゆまぬ努力が必要なのは勿論だが、地域共生社会の主役、市民後見人の多数の誕生を目指す必要性から、国、自治体及び関係機関は、自立型NPOの事業支援やNPO立ち上げ支援の仕組みつくりに取り組む必要があり、支援のための助成金申請制度も重要である。仕組みつくりは一筋縄ではいかないが、ことの重要性に鑑み、急がば回れの故事に従って、着実で有効な仕組みつくりが求められる。

5 近い将来、市民後見NPOが、自治体支援型か民間自立型かを問わず、全国至る所に重層的に創設されて、成年後見制度の場で市民後見人を多数育成し、活用されるようになれば、現在の家庭裁判所の役割をかなり肩代わりできるので、大幅に縮小させることができる。また、報酬の二重払いとなり、法人後見では、殆ど監督の機能を果たしていない後見監督人制度も縮小又は廃止ができる。そのような改善が進めば、成年後見制度は、見違えるように身近で親しみ易く、利用しやすい制度になるに違いない。私たちはその方向に向けて大いに努力したい。          (令41023記)


# by seinen-kouken | 2022-10-23 11:36