NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット 理事長 森 山 彰 1、始めに 当法人は、平成16年5月6日に創立、奇しくも新しい年号の令和元年5月5日に15周年の記念すべき節目を迎えることとなった。その間、当法人は成年後見制度の活性化を目標にして、3歩前進、2歩後退の着実な歩みを繰り返しながら、今日のような充実・発展の道をたどることができた。これは一重に、役員と会員の皆さんの並々ならぬご尽力と地域住民の皆様の温かいご支援・ご協力の賜物であるから、ここに深甚なる敬意と謝意を表したい。 ところで、15周年で、代替わりの大きな節目に際し、平成時代の歩みを振り返り、令和時代における事業展開を展望し、充実・発展の道を探ることは、極めて有意義なことである。 2、4つの活動指針と2つ基本理念 当法人は設立当初から、次の4つの活動指針に基づきスタートした。 ①.個人の尊厳の保持と自立の支援、②.ボランティアを視野に入れた非営利活動。 ③.専門家によるネットワークの構築と後見支援、④.公的サービスの分担。 この活動指針は、福祉を標榜し、各専門分野のネットワークの構築等先進的で、類例がなかったので、当初からシステムつくりに追われた。 やがて、この指針だけでは、後見制度利用の低迷を打破し、活性化を図ることは困難だと判明。その実現策としては、全国どこの住民でも、容易に後見制度の利益を享受可能な新たな基本理念が必要だと痛感した。 そのため、最初に生み出された理念が、「判断能力の不十分な高齢者・障害者の皆さんが、いつでも、どこでも、容易に成年後見制度を利用して安心した生活を送ることのできる社会をつくろう!」という「地域後見の実現」と「その主役は市民後見人である。」とする考え方である。 次に生み出された理念が、「身上保護重視の後見」である。身上配慮義務を新設して身上保護の充実・強化を図る以上、この事務には、法律行為のみならず事実行為を含むとする事実行為包含説が相当だとする考え方である。 そこで、後見の実務上、これらの活動指針と基本理念に基づく適正・円滑な事務処理システムを考究して開発することが喫緊の課題となった。 この強い要請を受けて、研究・開発を重ね、長年の紆余曲折を経て、何とか出来上がったのが、「後見実務とその指導監督システム指針」(処理マニュアル)である。このシステム指針は、逐次実施に移され、当法人における適正・円滑な事務処理に大きな貢献をすることになっただけでなく、地域住民から厚い信頼が寄せられることとなった。 なお、このシステム指針における「地域後見の実現」と「身上保護重視の後見」の理念は、成年後見制度利用促進法における基本方針の柱として位置付けられたことは、「安心の広場」24号巻頭言で述べたとおりである。 3、平成における基盤づくりの成果 事件面で見てみよう。30年度の相談事件処理数が〇〇〇件、後見等申立て、各種契約締結、遺言等支援の30年度受託件数が〇○○件、同年度末までの後見人受任数が累計○○〇人、効力未発生の任意後見移行型や遺言執行の保有数が〇○○件にのぼり、かなりの水準に達している。 財務面でみても、当法人は市町村依存ではなく、独立採算制であるが、事業収入や寄付等が寄与して、毎年黒字経営を続けており、不慮の事故に対する損害賠償金も相当額積み上げた。また、低所得者等対策の基金制度を設ける等安定した財政基盤の確立に成功した。 研修面でみても、職場研修を活発に行うとともに、市民後見人の育成面では、当法人独自の本格的育成研修を福岡で4回、熊本で1回、厚労省の市民後見養成研修は、筑紫野市と直方市で実施し、十分な実績を挙げ、研修に必要なノウハウを蓄積してきた。 以上のとおりの平成の実績を見る限り、お蔭様で当法人は曲がりなりにも、「しっかりとした基盤づくりができた」と評価できると思う。 これまでの基盤づくりの成果を令和ではどのように継承し、発展させるべきかである。熟慮して到達した結論は、当面は、かなりの年数を費やそうとも、次に掲げる平成30年度の重点目標を継承し、その達成に向けて全力を傾注することである。 第1 任意後見移行型を基軸とした受任体制の整備・拡大 この移行型全体がが身上保護重視の後見であることは勿論であるが、この目標の到達点は、任意後見研究会のメンバーが、改善後の移行型に基づき契約締結の支援能力を修得した段階としたい。 第2 人材の育成とその活動支援 この目標は最重要かつ永続的課題である。各種研修の充実は勿論だが、安心サポートネットの文化の浸透を図りつつ、3歩前進2歩後退の精神で各種事業を拡大しつつ、その過程で人材の確保と育成を図ることが肝要であろう。 第3 地域後見 地区拠点つくりの推進 各地域における相談体制から地区の拠点づくりを進め、それをベースにNPO法人を設立、促進法のいう中核機関を受任するか又は地域連携ネットワークに参加することが目標となる。この観点からは、宗像市、糸島市、次いで、春日市等の拠点づくりの支援も重要である。また、大地から芽を出したばかりの福岡市東区、早良区等の各区、久留米市についても、その芽を大切に育てたい。 もう1つ、常に配慮すべき課題として「安心サポートネット・グループ」の安定した運用の確保がある。 グループに帰属する安心サポートネット熊本については、情報交換を密にして、その安定的運営を支援することが重要である。同じく安心サポートネット生活については、充実した生活支援事業が行えるよう側面から援助することが必要である。 なお、令和時代の新たな課題として、親族後見を支援する活動とか低所得者層対策としての基金の充実に真正面から向き合うことも重要となろう。 5 大きな花が咲く 「初春の令月にして、気淑く風和ぎ・・・・を出典として、「令和」の時代に代替わりした。この意義を当法人に当てはめて説明すると、「令和の訪れとともに、当法人と会員及び支援者の皆さんの明日への希望が、見事に咲き誇る梅の花のように、大きく花を咲かせることができるように!」という願いが込められている。その願い通り、当法人の将来も、これまでの基盤つくりの上に、大きく奇麗な花が咲き誇ってもらいたいものである。
by seinen-kouken
| 2019-06-29 18:12
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