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市民後見人と新しい公共

判断能力を失った高齢者や障害者の人権を守り、生活を支えることを目的として創設された成年後見制度は、その発足から早くも10年が経過。しかし、この素晴らしい制度も、誠に残念ですが、その利用は、依然低調なままです。

現在、認知症高齢者数が2百万人、知的障害者と精神障害者で3百50万人と推定される中で、最高裁の公表している全国統計(20年1月~12月)でも、法定後見開始申立ての認容件数は約2万5千件、任意後見開始を意味する「任意後見監督人選任申立て」の認容件数は、僅か3百件強に過ぎません。 こんなに利用が少ない理由は何か?その最大の理由は、地域住民のニーズに応えることのできる後見人が不足していることです。

成年後見人等の選任は、家庭裁判所の専権ですが、その選任の実態を上記統計で見てみると、本人の親族から選任されたケースが、全体の約69%、親族以外の専門家後見人が約31%で、その大部分は、弁護士、司法書士、社会福祉士の職能団体に帰属する人達です。
この数字でもお分かりのとおり、家庭裁判所は、これまで後見人の人的供給源を、「親族」と「第3者専門家群」に依存して運用してきました。問題は、この2種類の供給源で地域住民のニーズに応えることができるか? 答えは、はっきり「ノー」です。

判断能力の不十分な高齢者や障害者の人達は、家族環境、境遇、身体能力、財力、個性等が様々で、それぞれがかなり相違しています。
これらの人達の中には、親族の愛情中心の後見人がふさわしい人達が沢山いる反面、頼れる親族がいない、又は、親族による後見を嫌う人も、沢山います。また、第三者専門家による後見が適している人々も多数いますが、逆に,第三者専門家は敷居が高いと思う人や、ビジネスライクの後見を嫌がる人達も大勢います。

それでは、2種類の供給源の後見人以外に、地域住民のニーズに最も良く応えることのできる後見人は、どんな人達か?
ここで、今年1月に行なわれた鳩山首相の施政方針演説を引用しますと、
「今、市民やNPOが、教育や子育て、街づくり、介護や福祉など身近な課題を解決するために活躍しています。・中略・人を支えること、人の役に立つことは、それ自体が歓びとなり、生き甲斐ともなります。こうした人々の力を、私たちは、「新しい公共」と呼び、この力を支援することによって、自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生したい・・」、そうです!人を支え、人の役に立つことに喜びや生き甲斐を感じる人達こそ後見人にもってこいの供給源です。 そして、この種の後見人を私達は、「市民後見人」又は「NPO後見人」と呼んでいますが、この人達は、ボランティア活動を苦にせず、フットワークがよく、親しみ易く、費用的にも利用し易い後見人だと思います。

当法人では、この視点から、4年前から、ボランティア活動に熱意のある一般市民を対象にして、福岡市と熊本市で3回にわたり「市民後見人育成研修」を実施して、多数の「市民後見人」を育成してきました。現在当法人の指導監督のもとに、活躍している市民後見人は30名に上っています。

成年後見制度の利用を飛躍的に向上させる有効な方策は何か?その答は、市民後見人を大規模に育成し、その活用を図ることだと思います。 今こそ、後見制度を所管する法務省も家庭裁判所も、「新しい公共」の観点から、大胆に現在の後見人選任の枠組みを見直し、市民後見人の育成と活用に取組むべきだと思います。

ところで、市民後見人が多数育成されますと、後見人活用の仕組みが必要です。どの地域でも、後見制度の円滑な活用のためのネットワーク(市民、NPO,地域包括支援センター、病院、介護、障害施設等の連携)が構築され、地域の皆さんの助け合いや協力関係が醸成されていれば、何時どこでも、高齢者や障害者の判断能力が不十分になって、生活が乱れても、後見制度を利用して、その人を救済することができることになります。
このような社会は、高齢者、障害者にとって安心、安全な超高齢社会であり、これこそが、新しき公共であり、地域主権の実現であります。菅首相は、これらの理念を継承すると表明していますので、政府は、率先してこの理念の実現に向けて、施策の舵取りをして欲しいものです。
以 上
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by seinen-kouken | 2010-06-04 22:10