後見人等の担い手の確保・育成の推進 市民後見人育成研修(久留米地区)の成功を期して! NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット 理事長 森 山 彰 当法人の事業は、相談者との対面により後見等のニーズを把握し、地域住民の皆さんの要望に応えて、事件処理を受託し、もって、地域の福祉向上に貢献することにある。ところが、令和3年度も2年度と同様、全期間を通じてコロナ禍のため、事業活動が大きな制約を受けた。それにもかかわらず、地域住民の皆様の信頼を得て、何とか各事業を遂行できたことは、これ一重に、役員及び会員の皆さんが、力を合わせて努力した成果であり、また地域住民の皆様のご支援・ご協力の賜物であるから、心から感謝を申し上げたい。 特に、このような悪条件下で延期に延期を重ねた第5回市民後見人育成研修を実施し、成功裡に終了できたこと、及び長年の懸案であった久留米出張所を本年2月1日に新設し、新体制で事務処理を開始できたことは、これこそ当法人の底力を示した成果であり、誠に喜ばしい限りである。 ところで、去る3月25日第二期成年後見制度利用促進基本計画が、「尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進」というサブタイトル付きで、閣議決定された。 この第二期計画で、特に注目を引くのは、優先して取り組む事項が明らかになったことである。その第1が「任意後見制度の利用促進」であり、第2は、「後見人等の担い手の確保・育成の推進」である。すなわち、これらの優先事項が、喫緊に取り組むべき私たちの課題ということになる。 ところが、当法人では、この第1と第2の優先事項とも、この数年来、事業計画の重点目標として、鋭意その実現に取り組んできた。 第1の優先事項については、当法人は、平成27年以降受任体制の基軸を「任意後見移行型」に移行し、移行型それ自体を身上保護重視、意思決定支援の観点から改良して、利用者に分かり易く、親しみ易い任意後見制度として利用促進を図ってきた。 現行の任意後見制度は、使い勝手が悪いという指摘が多い。第2期計画では、任意後見制度の内容自体に切り込んで、改善の方向を示して欲しかったと思う。 第2の優先事項については、2つの課題が含まれている。その課題1は、市民後見人や法人後見を支える職務担当者(支援員)等の後見制度の担い手の確保・育成の推進であり、課題2は、法人後見の担い手、つまり法人後見を実施する団体の育成である。 当法人は平成22年度、熊本市に「NPO法人成年後見安心サポートネット熊本」を設立した。この際用いた手法は、最初に、熊本市に事務所を構えて当法人の出張所として運営し、次に、そこを拠点に市民後見人育成研修を実施し、最後に多数の研修修了者が力をあわせ、法人後見を目的とする市民後見NPOを立ち上げたのである。 久留米市における市民後見NPO立ち上げも、熊本方式と同様の方式で行いたい。まずは、昨年末確保した事務所を、2月1日から出張所として運営し、そこを拠点に久留米地区の市民後見人育成研修(研修期間7月~12月)を開催し、終了後は、多数の研修修了者が力を合わせ、市民後見NPOを立ち上げる計画である。 この方式だと、市民後見人等の担い手の確保・育成に関する課題1と法人後見の担い手の育成に関する課題2が一挙に達成されることになる。それも、自立型NPOの自己資金によってなされると、まさにダイナミックで、地域共生社会に相応しい。ただし、全国的な視野でみると、この一連のプロセスに財政支援が行われると、市民後見NPOの育成も活気づく。 第二期計画をみると、法人後見の実施主体は、社会福祉協議会に多くを頼っているが、都市部の一部を除けば、社会福祉協議会には、制約が多く硬直した面が見られるうえ、利益相反が生じる可能性もあるから、多くを期待するのは無理である。法人後見の実施主体としては、非営利の特徴を持ち、民間としての活力と柔軟性を有する市民後見NPOの育成にも、力点を置くのが相当である。将来を見据えて、第二期計画ではこの視点も加えて、再検討すべきではないかと思う。 最後に、この度の久留米地区の市民後見人育成研修は、コロナ禍の中で、当法人の存在自体が殆ど知られていない地域を対象として実施するのであるから、 困難もあると思うが、会員及び支援者の総力を結集して、是非とも困難を克服し、何としても成功裡に終了したい。全会員の絶大なご協力をお願いする。 以 上 #
by seinen-kouken
| 2022-05-14 17:33
ウイズコロナ社会における「市民後見人育成研修」 オンライン研修の仕組みを取り入れよう! NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット理事長 森 山 彰 1、新型コロナウイルスは,従来株に感染力の強いイギリス変異株、更に強力なインド変異株が加わって、その猛威を振っていたが、国民の懸命な自粛生活の成果が出て、鎮静化に向かい、去る9月末日をもって緊急事態宣言が解除され、平常を取り戻しつつあることは、大変喜ばしいことである。 この1年半にわたるコロナ禍により当法人の事業は、少なからず大打撃を受けた。当法人の事業は、相談者との面談を通して後見事務等を受任し、後見人等として本人に寄り添うことにより地域住民の皆さんの信頼を得ているから、相談所の閉鎖等で面談が困難になったり、3密(密閉、密集、密接)回避のため、啓発や研修活動が停滞したりすることは、当法人の活動を著しく阻害する。 このような悪条件下にもかかわらず。地域住民の皆様の信頼を損なうことなく、何とか各事業を遂行できたことは、これ一重に、役員及び会員の皆さんが、力を合わせて努力した成果であり、また地域住民の皆様のご支援・ご協力の賜物であるから、本誌を借りて、心から感謝を申し上げたい。 ところで、このコロナ禍で、最も打撃を受けたのは、第5回市民後見人育成研修の遅延である。ご承知のとおり、当法人は高齢者による高齢者・障害者の支援団体である。つまり、当法人を構成する会員は、殆どが現役を退職した後、当法人の市民後見人育成研修を受講し、市民後見人として活躍してこられた方々である。しかし、入会後15年や20年も経つと、心身とも老化に悩まれることは、避けられない。そこで、定期的に育成研修を実施し、多数の入会者を得て、後継者育成を図るわけである。 2、本来この第5回研修は、令和2年に計画していたところ、コロナ蔓延のため延期、今年6月実施で用意万端整えていたところ、第4波が襲来、5月12日から3回目の緊急事態宣言が発出されて、再度延期を強いられた。そこで、ワクチン接種も軌道に乗ったので、今度は大丈夫だと、本年9月実施を決断し、各自治体や社協の後援を採り、キャラバン隊を繰り出して募集活動を開始したところで、又もや緊急事態宣言にぶっつかり、延期のやむなきに至った。 そこで、9月27日の理事会では、これ以上の延期は、活動の停滞を招くとして、令和4年1月8日からスタート、延べ50時間の第5回研修の実施を決定、第6波が襲ってきても、絶対に延期せず、実施することを確認した。そして、10月16日の後見実務研究会では、出席者の皆さんに必ず実施する旨を説明するとともに、もし緊急事態が宣言され、研修会場(アイアイセンター)が使用できないときは、オンライン研修実施の決意を表明して、協力方を要請した。 3、オンライン研修とは、講師がインターネット回線を通じて講義し、受講生が自宅や適宜の場所で、パソコンやタブレット端末で受講する研修方式である。 このオンライン研修には、2種類のやり方があって、1つは、「録画方式」であり、もう一つは、「ライブ配信方式」である。録画方式は、講師側からの片方向からの配信となるが、受講側は自分のぺースで好きな時間に受講できる。これに対し、ライブ配信方式は、講師と受講生とが動画でお互いの顔を確認しながら、同じ空間での研修となり、質疑応答も可能である。 第5回研修は、多数の外部講師にもお願いしているため、適宜両方式を選択して使用することになるだろう。いずれにしても、多数の受講生に対する円滑な研修を実施するためには、事前準備を十分行って、ノウハウを蓄積し、手慣れておくとこが必要である。研修関係者の協力を求めて、万全を期したい。 もし来年1月に緊急事態の宣言がなければ、オンライン研修は実施しないことになるが、オンライン研修の練習で得た成果は、当法人の事業推進の面で大いに役立つと思うし、また、創意工夫を凝らして、役立たせることが必要である。この試みは、業務のデジタル化の一端として行いたい。 #
by seinen-kouken
| 2021-12-06 21:06
😢 後見型委任の効力中断者第1号の思い出 馬場義一君を偲ぶ 当法人理事長 森山 彰 1,当法人が創立されて間もない平成18年のこと、当法人と「任意後見移行型」と「死後事務委任契約」を締結したいと、体格のがっちりした、60歳を少し越した男性が福岡本部を訪ねてきた。妻に先立たれ、身寄りがないから、転ばぬ先の杖として支援を頼みたいと言う。さっそく事情を聴くと、彼の名は馬場義一、育った故郷は、広川だという。広川はその昔、筑後川の支流である広川の流域に発達した広川荘園を指し、私もそこで育ったから同郷である。この同郷のよしみで、彼と私は急速に親しくなった。それともう一つ、彼も私と同様、熱烈なソフトバンクファンだった。それで、更に親密さに拍車がかかった。 彼と私は会うと、ソフトバンクの応援の話に終始した。ときに私は彼をアメリカンフットボールの観戦に誘った。アメフトの試合のだいご味は、ミニスカートのチアガールが飛んだり跳ねたりするチアダンスを身近に見物できることである。2人は、試合そっちのけで、躍動感溢れるチアダンスを楽しんだ。 2,彼のそんなのどかな生活は、彼の脊髄内に腫瘍が発見されたことで急変した。平成21年2月のある日、彼から悲痛な声で、「脊髄内の腫瘍の摘出手術のため、即入院となった。緊急に支援してほしい!」と当法人に連絡があった。私は驚いて入院先の和白病院に急行し、彼を元気付けると同時に、彼とともに、担当医師のインフォームド・コンセントに立ち会った。結論は、「脊髄内腫瘍をこのまま放置すれば、生命が危ない。非常に難しい手術だが、手術を実施すれば、生命は助かるが、完全にもとの身体に戻るとは言えない。」との説明だった。結局は医師の説明する手術に同意し、私も止むを得ないと賛成した。 そこで、相当長期の入院が決定したので、さっそく彼の申し出により任意後見移行型の「後見型委任契約」 を発効させ、支援活動をスタートさせた。なにしろ彼は着の身着のままで入院したので、その後の支援作業が大変だった。 3、最初の作業は、彼が賃貸アパートでの一人暮らしだったので、そのアパートに出向き、印鑑、預貯金通帳等の貴重品を預かり、入院生活に必要な衣類等を病院に持ち込むことだった。彼の不在中の作業なので、妻に手伝ってもらうこととし、マイカーに妻を同乗させ、迷いながら彼のアパートにたどり着いた。 そこで、入院中の彼と携帯電話で連絡を取り合い、鍵のありかを聞きだし、その鍵を使って、2階の室内に入った。次に、印鑑、預貯金通帳の全部、現金、病院に持ち込む衣類、各種証明書類のありかを、携帯で1つ1つ指示を受けて探し出し、何とか揃えて、病院に持ち込むことができた。彼の依頼とはいえ、夫婦で他人の部屋の家探しは、あたかもコソ泥をしている感じで、気持ちがよくなかった。 その次は、和白病院との入院契約である。契約者本人は馬場義一であり、連帯保証人や身元保証人になるのは、当法人の職務外なので、その欄を削除して、「任意後見受任者」として記名・押印して入院契約に参加した。 その次にすべきことは、預貯金通帳の名義書換えである。福岡銀行に出向き、任意後見移行型契約の公正証書、登記事項証明書、印鑑証明書等の必要な書類一式を添付し、法人印(実印)を押捺して、名義書換え申請を行った。同銀行では、銀行取引の代理権付与の事実を確認する必要があるとして、本人と会うため、翌日に和白病院まで出向き、本人の意思を確認後、通帳名義を「馬場義一代理人NPO高齢者・障害者安心サポートネット」と書き換えてくれた。これで、入院代の支払いや物品購入もできるようになり、ひとまず安心した。また、長期入院に備え、自家用車の廃車手続を行い、電気、ガス、水道の供給停止手続を行った。 4、彼の手術は、医師の説明通り長時間にわたって行われ、脊髄から腫瘍の摘出は成功した。ただし、残念ながら下肢に伸びる神経が切断されたまま、接合していないことが判明した。医師から「歩行は片足だけで、両足での歩行は困難である。予後はリハビリに専念して、どれだけ回復するかである。」と説明を受け、彼は大変失望落胆した。私は、「念力岩を通す」の故事を引用し、自然接合を念願して、一生懸命リハビリに励めば、その可能性があると励ました。 やがて病院でのリハビリ期間も過ぎ、退院となった。杖をついての歩行であるから、退院準備として2階に上る外階段には手すりが必要となり、その設置工事について家主と交渉した。その結果家主は快諾して工事をしてくれた。また、退院後もリハビリを継続する必要があるので、アパート近所でリハビリ業者を探すのも、一仕事だった。 万事退院の準備が終わったところで退院してもらい、その後は、リハビリに専念しながら、日常生活も自力でできるよう支援した。そして、元気を回復し、自立できるようになった段階で、彼と当法人は話し合って、後見型委任契約の効力を一時中断することとした。かくして、彼は後見型委任の効力中断のシステムを利用した第1号となった。 彼は、この委任開始から中断に至るまでの間、このシステムに感謝し、褒め称えた。そして、「貴法人への遺贈は、この移行型契約のシステムの利用促進と、身寄りが無く、困窮している人達のため役立てて欲しい!」と強く要望された。私は即座に「大いに努力したい。」と答え、彼の芳志に深く感謝した。 5、自宅復帰後は、月1回は福岡本部を訪ねてきた。ソフトバンクの負けが込むと、夜電話を掛け合い、よく選手やコーチの悪口を言い合った。そうすると、不思議に常勝モードに乗って勝ち続け、リーグ優勝や日本一となった。だから、こんな悪口を言う会話を何度も何度も繰り返して喜び合った。 ところが、昨年2月警察からの電話で、彼の孤独死を知った。死亡原因は基礎疾患不全による突然死である。スクーターを乗り回すほど元気になっていたのに、誠に残念である。死後事務委任契約に基づき葬儀を終え、遺骨を拾って、彼の故郷である広川の共同墓地に納骨を依頼した。今頃は天国で、「俺が、下界でソフトバンクの悪口を言わなかったから、今年は負け込んだ。ダラシ無い!」と悔しがっているかもしれない。心からのご冥福をお祈りしたい。 #
by seinen-kouken
| 2021-11-03 18:10
コロナ禍の緊急課題 市民後見人育成研修の実施と業務のデジタル化! NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット 理事長 森 山 彰 1、新型コロナウイルスは,従来株に感染力の強いイギリス変異株、更に強力なインド変異株が加わって、その猛威は全国を襲っている。 このような悪条件下で、当法人は、各事業とも中止や変更を余儀なくされながらも、地域住民の皆様の信頼を損なうこともなく、各事業を遂行してきたことは、これ一重に、当法人の全役員及び会員各位が、一致して努力した成果であり、また地域住民の皆様のご支援の賜物であるから、本誌を借りて、心からお礼を申し上げたい。 2、ところで、このコロナ禍でも、ないがなんでも実施したい緊急課題は、第1が市民後見人育成研修の実施であり、第2が業務のデジタル化である。 第1の緊急課題は、福岡市における「第5回市民後見人育成研修」と「久留米市」及び「福岡市東部地区」を対象とする育成研修である。 まず、第5回育成研修は、当法人の事業拡充や会員高齢化に伴う人材の確保と補充を目的とする。従来から会員の大規模増強は、市民後見人育成研修修了者の入会によって確保してきた。直前の会員増強が平成28年の第4回育成研修で、間が空いたので、令和2年度には、第5回育成研修の実施が不可避だった。 ところが、3、4月にはコロナ第1波、夏には第2波、年末年始には第3波が襲来し、この第3波には緊急事態宣言が出されたので、残念ながら延期の止む無きに至った。そこで、新たに令和3年6月からの開催実施を決定、カリキュラムの作成から各自治体への後援依頼まで用意万端整えた矢先、第4波が襲来、5月12日から福岡県にも3回目の緊急事態宣言が発出されて、再度延期を強いられた。 そこで、これ以上の延期はできないと、本年9月実施を決断した。緊急事態宣言は6月20日まで延長されたが、先進諸国に比べ、著しく遅れを取ったワクチン接種が軌道に乗ったので、今度は大丈夫だと、強い期待を寄せている。 3、久留米市における市民後見人育成研修も、その実施が第5回育成研修の遅れの影響を受けて遅れることとなった。 本研修の役割は、研修後の受講修了者を中心に「市民後見NPO」を立ち上げ、その後見NPOが、市民後見人を指導・育成する仕組みを作ることにある。しっかり準備を行い、本研修を成功裡に終了させた後、久留米市民が喜ぶ後見NPOの設立につなげて、多数の市民後見人を誕生させたい。 その次が宗像を中心とする福岡東部地区の育成研修である。是非とも、久留米市と同様な取組みを行って、地元住民に歓迎されるような市民後見NPOをつくり、その活発な活動を支援したい。 4、第2の緊急課題は、業務のデジタル化である。当法人の基本理念である「地域後見」は、いつでも、どこでも、容易に成年後見制度を利用することにより、安心した生活が送れる社会を構築することであるが、前述のように、当法人の力だけでは、2年間で3回の育成研修がやっとであるから、自力実現には無理がある。したがって、地域後見を目指すためには、当法人以外の「後見NPO」の力を利活用するのが最善の選択であろう。 この観点から、現在「安心サポートネット基金」を利用し、創立時の脆弱な後見NPOの財政を支援することとした。しかし、支援数に限度があり、市民後見人を育成するまでには、長い年月がかかりそうだ。 現在、我が国は、DⅩ(デジタルトランスフォーメーション)の潮流にあり、コロナ禍がこれを加速している。この流れの中で、市民後見NPOと市民後見人を多数創出するには、どんな施策が有効か? 5、当法人は、これまで従前の任意後見移行型を身上保護重視の見地から改良して、新任意後見移行型を創出した。そして、この新移行型と、死後事務受任や遺言支援等を合わせて、1つの事業モデルを作り上げてきた。この事業モデルは、幸い地域住民の信頼を得て、安定した財政基盤を築き上げるのに成功したように思う。今度はこの事業モデルのデジタル化が可能なところはデジタル化して、1つのパッケージとして他の後見NPOに提供するのである。提供を受けた後見NPOは、研鑽に励み、適正に運用すれば、当法人と同様のメリットを享受できると思う。ただし、問題は、当法人の業務をデジタル化して、他の後見NPOに価値のあるパッケージが提供できるかである。 そこに不安もあるが、当法人内にデジタル化研究のプロジェクトも発足したし、強い使命感と熱き情熱を持ってやれば、やれないことはないと思う。 もし、業務のデジタル化と他の後見NPOへの事業モデルの提供に成功したとすれば、地域のあちこちに市民後見NPOが活発に活動し、市民後見人が多数誕生することも現実味を帯びてくる。是非ともこのように「地域後見の実現」が身近になって欲しいものと念願している。 #
by seinen-kouken
| 2021-06-20 11:01
地域後見の実現を目指す 新規後見NPOの設立支援について NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット 理事長 森 山 彰 1、新コロナウイルス禍の終息の気配が見られない中、政府は、コロナ感染拡大防止と経済活動の両立を目指して、矢継ぎ早に,GoToキャンペーンや外国人の入国規制緩和に動き出した。 当法人の事業も、緊急事態宣言で特設相談所における相談業務も中断状態になったが、徐々に再開、しかし、相談件数や事件の受託件数は低い水準に止まっている。このような厳しい環境下で、適正・円滑な事業運営に尽力されている役員・会員及び支援者の皆さんには、心から敬意と謝意を表したい。 2、当法人は、成年後見制度の活性化を目指し、「判断能力の不十分な高齢者・障害者の皆さんが、いつでも、どこでも、容易に成年後見制度を利用して安心した生活を送ることのできる社会をつくろう!」という「地域後見」の理念に基づき積極的に活動してきた。 ところで、この「安心した生活を送ることのできる社会」、即ち共生社会の実現手段である成年後見制度は、法定後見と任意後見の両制度がバランスよく機能することが必要である。しかし、令和元年末現在の両制度の利用率をみると、法定後見の利用者が221,790人に対し、任意後見は僅か2,652人、実に法定後見の1.2%に過ぎない。このような比率で、かりに、全国津々浦々に後見制度が普及したとしても、「地域後見」の実現とは、到底言える話ではない。任意後見が半数以上の割合を占めて、真の地域後見と言えるのである。その理由は、我国の任意後見が、自己決定権の尊重の理念に基づき設計された制度であるのに対し、法定後見は、後見人等による代理・代行を基本としているので、自己決定権の尊重等の理念と矛盾するところがあるからである。 3、そこで、平成26年当法人は受任体制の基軸を法定後見から任意後見に移行することを決断した。移行する任意後見は、地域住民のニーズに適応していることが重要である。我国の超長寿社会における地域住民のニーズとは、第1に、身体能力の減退により自立生活が困難になった場合の保護支援策として、任意後見移行型における前段の「後見型委任契約」が、第2に、判断能力の低下における保護支援策として後段の任意後見契約が機能する「新任意後見移行型」に改善することであった。そのためには、新移行型の両契約とも、身上保護重視の後見に改善を図ることとした。この改善により真に「転ばぬ先の杖」が誕生したのではないかと自負している。 4 次に改善を目指したのは、新移行型の受任体制の整備である。当法人は後見NPOであるから、主役は市民後見人である。その市民後見人が新移行型を円滑に受任できなければ、「地域後見」は、目途が立ちにくい。 そのためには、受任を手助けするマニュアルが必要である。このマニュアルは、相談者に理解し易く、市民後見人にも説明し易いことが必要であるから、どの契約にも共通の仕組みや手続には、図解説明図面を用い、委任者本人の意思や選好を確認するには、本人の意思決定ができるよう、選択肢を示す質問方式を採用した。そして、再三の試行と手直しの結果、出来上がったマニュアルが、去る10月1日付けで通達された「任意後見移行型の受任事務及び受任者等の報告システム指針」である。これで、やっと当法人は、全組織をあげて新移行型の受任システムを稼働させることが可能となった。 5 このマニュアルを活用して、当法人が新移行型の受任活動に注力しても、任意後見の普及には限界がある。新たな普及・拡大策を模索しなければならない。その1つは、各地の養成研修で育成した市民後見人が、任意後見を普及させる方法である。他の1つは、法人後見の担い手である市民後見人を活用して、普及させる方法である。後者の方法が、法人後見のメリットを存分に活かせるので、はるかに優れている。 現在、地域生活支援事業や成年後見制度利用促進法の基本計画では、後見NPOの設立支援や活動支援の方針が打ち出されているが、殆ど実現を見ていない。したがって、当分の間は、自治体等の公的機関に期待を寄せることは無理である。しかし、地域後見の観点からは、新移行型かどうかを問わず、任意後見移行型を普及させるため、是非とも後見NPOの設立を促進する必要がある。微力ではあるが、当法人のような民間の力で、その端緒を開くしかない。 幸い、当法人の安心サポートネット基金では、後見NPOの設立当初の運用費用が、助成の対象となっている。この発想は、当法人の運営資金が欠乏していた発足当初、財団法人倶進会から2年連続で計2百万円の助成を受け、これで、「市民後見人育成研修」を開催し、成長軌道に乗ることができたことに由来する。 この教訓に基づいて、当法人は、安心サポートネット基金を活用して、後見NPOの設立を支援する方途を切り開いた。この方途に従って、任意後見移行型を事業目的とする後見NPOの当初の運用資金について助成する仕組みを構築し、それに応募した後見NPOに対し、当初の運用資金を助成するのである。この企画が実現し、その支援対象数が、10か20法人程度としても、自治体や他の法人による設立支援の呼び水になれば、一つの流れができ、後見NPOの設立促進が大いに期待できると思う。 今後、当法人は、この面で、いささかなりとも貢献できたら、嬉しい限りである。
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by seinen-kouken
| 2020-11-15 16:59
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