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任意後見移行型と転ばぬ先の杖


NPO法人高齢者・障害者安心サポートネット

                理事長 森 山 彰

1 任意後見移行型と「転ばぬ先の杖」

皆さんもご承知のとおり、安心サポートグループは、後見人等の受任体制の基軸を法定後見から任意後見移行型に移行しました。その理由の第1は、任意後見移行型が自己決定権の尊重の理念に基づく魅力的な制度であるからです。そして、理由の第2は、現代の長寿社会の顕著な現象として、私達はすべて、.身体能力の低下か、又は、②.判断能力の減退により自立した生活が困難となる宿命を背負っていますが、この移行型が、.と②.の双方の保護支援策となるからです。

何故双方の支援策になるかと言えば、この契約は、前後2つの契約で構成されていて、前の契約が後見型委任契約(従来の名称は財産管理等委任契約)で、①に対応する支援策、後の契約が任意後見契約で、②.に対応する支援策だからです。したがって、この移行型さえ締結しておけば、将来どんな事態になろうとも、自立した生活が保障されるから、「安心!」という意味で、「転ばぬ先の杖」だと言い切れると思います。

2 移行型の改善

従前の移行型は、財産管理偏重で、説明しにくく、問題点が多いと批判されていました。そこで、この「移行型」を「わかり易く」、「親しみ易く」、「安心して支援を受け易く」という視点から、改善する必要があります。

この批判の1つ目は、文書を基にした口頭説明では、複雑過ぎて、わかりにくいという指摘です。そこで、説明者も説明し易く、委任者本人も理解し易くするために、移行型を図解して、その図解図面で説明する方式を採用して、この解決を図りました。2つ目の批判は、従来の移行型は財産管理偏重で、親しみにくいという指摘です。そこで、支援内容を「身上保護重視」の観点から大幅刷新を図った結果、両契約とも同質の身上保護型となり、親しみ易くなりました。

そして、3つ目の批判は、委任者本人の指導監督機能が弱いため、適正な支援を受けにくいという指摘です。この欠陥を是正するためには、指導監督に適した報告システムの構築が不可欠ですが、と同時に、法人が受任者であれば、当法人のように、法人自身が本人側に立って、職務担当者を指導監督できる仕組みを構築できるので、「安心して支援を受け易く」なります。そうだとすると、移行型の受任は、当法人のような仕組みを持つ法人が、最も適応性があるように思います。

3 万全な「転ばぬ先の杖」

「転ばぬ先の杖」とは、準備が無くて、失敗するのは駄目で、前々から準備しておけば、失敗せずに安心できる!という意味だから、身寄りのない高齢者にとって「移行型」を締結しただけでは、立派な「杖」といえても、万全な「杖」とまでは言えません。この移行型を万全の「転ばぬ先の杖」とするためには、この改善された移行型に「死後事務委任契約を」を連結することが必要です。人が死亡すると、どんなに整理の上手な人でも、各種サービス料金の支払債務や遺品の処分等の残務整理や葬儀・納骨の祭祀事務が残ります。この死後事務を処理してくれる相続人等がいない限り、この死後事務委任契約」を締結していないと、誰も処理する者がなくて、死後の不安が解消しないからです。

更に、相続人が複数いても、全く相続争いが無い場合は例外として、相続争いが生じたら、遺産が宙ぶらりんになり、相続が骨肉の争いの始まりとなります。この悲劇を防止するためには、遺言が必要で、遺言さえあれば、「転ばぬ先の杖」は万全となり、安心です。

安心サポートネットグループは、「名は体を表す」の言葉のとおり、地域住民の皆さんの安心を追求することをその使命としています。当グループが受任の軸足を「移行型」に移行したということは、会員各位がこれらに関する幅広い知識とノウハウを習得に努められ、改善後の「移行型」をベースに、死後事務委任契約の締結や遺言支援を実践して、地域住民の皆さんの安心の確保と保全に万全を期することだと思います。この目標は安心サポートネットグループの重点目標ですから、是非とも、組織を挙げてこの実現にご尽力願いたいものと切望しています。


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by seinen-kouken | 2018-07-15 17:34

100歳まで生きるから支援を頼む!

1 Kさんの相談
 娘さんが父親を連れて任意後見契約の相談にきた。ところが、何とその父親は、十数年前に知り合った、かっての友人Kさんだった。私の公証人時代、そのKさんから、「遺産全部を九州国立博物館の建設資金に遺贈したい。」と希望する人を紹介されて、その遺言公正証書を作成した。このことがきっかけで、Kさんと囲碁友達になり、3目の置き碁で、Kさんの挑戦を受けていたから、私を先生と呼んでいた。
 やがて、私が成年後見制度の活性化を旗印としたNPO事業で多忙になると、すっかり疎遠なり、このたび、懐かしい再会となったわけである。
Kさんは85歳で、元気者である。しかし、奥さんは既に有料老人ホームに入所しているので、マイホームで1人暮らし。Kさんには、結婚した娘さんが2人いて、2人とも家庭を持っている。長女の方は、入所中の母(Kさんの妻)の世話と、Kさんの生活への気配りで多忙、また、次女の方も、家族の面倒と夫の親の介護で精一杯。
 Kさんを取り巻くこのような状況は、この超高齢化社会では、よく見慣れた風景である。Kさんは、自らの心身が衰弱して、自立した生活ができなくなったとき、誰が自分を支えてくれるか?娘達は、Kさんの世話まで手が廻りそうにない。誰もいないと気が付いた途端、それが不安で、不安で、その不安が募った末の相談だった。

2 任意後見移行型・遺言
 そこで、その不安解消策は、任意後見移行型の契約を締結することだと助言した。任意後見移行型とは、Kさんが信頼できる人を受任者として、身体能力の低下時に支援してもらえる後見型委任契約と判断能力の低下時に支援してもらえる任意後見契約を同時に契約しておき、Kさんの身体能力が低下したときは前者の契約で、次いで、判断能力が低下したときは後者の契約で、というように、支援する根拠法が移行する契約のタイプを言う。
 任意後見移行型の前段階の「後見型委任契約」とはどんな契約か、疑念をもたれる読者もおられると思う。従前から、この契約は「財産管理等委任契約」と呼ばれ、この呼称は、この中身が財産管理中心であることを言い表している。しかし、任意後見制度が誕生すると、この制度の影響を受け、現在では、この契約による事務は、身上監護と財産管理の各事務であることが定着し、その上、特に身体能力の低下者のニーズは、身上監護重視であるから、この契約も、このニーズに応えた新しい中身に改善されなければならない。
 そうだとすれば、「新しき酒は新しき革袋に盛れ」という故事にあるとおり、新しき革袋として「後見型委任契約」という呼称がぴったりである。まさに「名は実を表す。」で、この呼称が全国に定着すれば、この任意後見移行型の契約も、地域住民に身近で、親しみ易いものとなるだろう。是非そうなることを望みたい。
 話を元に戻そう。Kさんからは、「2人の娘達に頼むのは無理、他に信頼できる者は居ないので、私の面倒は安心サポートネットにお願いしたい。」と依頼された。
勿論「引き受けたい。」と快諾、更に、Kさん死亡後の相続財産争いを防止するため、遺言をも勧めたところ、「是非お願いしたい。」という返事、そこで、移行型の契約と遺言の各文案についてKさんの意見を十分聞き取って準備を進めた。

3 Kさんの夢
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 後日、移行型と遺言の文案を公証役場に持ち込み、公正証書が出来上がった。
それで、事務所に戻ると、Kさんが、いきなり「昨夜亡母と一緒に居る夢を見た」と話を切り出した。Kさんの亡き父・母は、ともに100歳を超える長寿だったそうだ。その母に、「もうこのへんで、そちらの天国に行きたいが、」と話し掛けたら、
 母が即座に、「何をとぼけたことを言うの。後見制度の支援をうけて、これからが新しい人生が始まるのよ。今来たら、追い返すから!」「元気で頑張り、100歳になって、こっちにきたら、歓迎してあげるわよ!」と言われたそうである。
 そして、いきなり私に向って、「100歳まで生き延びることにしたから、先生もそれまで元気で支援して欲しい。」と訴えられた。私は、長生きが無理なピンピンコロリの志願者なので、その想定外の言葉には驚いた。しかし、Kさんの100歳まで、私が元気だとしたら、それで喜ぶのは、Kさんより私の妻だと一瞬ひらめいて、「そうなったら、大喜びするのは女房の方かな!」と応じて、事務室内は爆笑となった。
続けて、「当法人は法人後見だから、Kさんの担当者が職務をできなくなっても、代わりの担当者が職務を行うから、どんなに生き永らえても、大丈夫ですよ!」と念を押した。Kさんは、任意後見移行型と遺言が、「転ばぬ先の杖」であることを納得して、すっかり安心している様子だった。
                       以 上

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by seinen-kouken | 2016-06-01 19:16